死生観の転換(ある患者さんとの体験を通して)その三

 それから、2週間後のこと!


 非常勤先にいくと、朝の回診の時点で、患者さんは下顎呼吸状態になっていた。夕方まで持たないだろうと思った!「もう数日前から、こういう状態になり、いつ亡くなってもおかしくないと数人の先生に告げられていた。おじいちゃんは我慢強いから。やっぱり先生を待っていたんだ」とご家族の方が教えてくれた!心の中が「ありがとう」という気持ちで一杯になった!

 

 その日は、外来診療(午後6時)が終わるまで、病棟から連絡が来なかった!頭の片隅で彼のことが気になり、病棟に早く上がらなければと思っていたが・・・外来が終わって、看護婦さんと少しだけ話をしていた時、待ちきれなかったようで、「早く来て」と彼が私の背中を優しくもしっかり押してきた。私はこの時に、はっきりと彼の存在を感じとり、彼とだけでなく、万物すべてと繋がっているような、愛情に満ちた不思議な感覚を覚えた!思わず笑みが浮かんだ!人間は肉体だけの存在ではなく、たとえ肉体が滅んでも生きているんだとはっきり悟った瞬間だった!

 

 彼の病床に着くとまもなく彼は息を引き取った。ご臨終に際し、心が晴れやかで嬉しさに充ちたのは、これがはじめての経験だった。ご家族の方たちに感謝の言葉ととともに、「おじいちゃんは、先生を待っていたんだ」「先生に見送ってもらえて喜んでいるだろう」と再度仰って頂いた。

 

 これ以降、私は臨終に立ち会うことが苦痛ではなくなり、むしろ、肉体での生を終えてお疲れさまでした。本来の世界かそれ以上の世界にお還りください(ご成仏ください)といつも心の中で思っています。

 

 人間は多次元的存在であることを、身をもって教えてくれた彼には感謝の気持ちでいっぱいです。教えてくれてありがとうございました("⌒∇⌒")

2018年12月20日 07:10